2011年1月9日日曜日

足らない物は何か

対象者に接近し、知られていない事実を掴みエピソードを構築する。この「ノンフィクション」や「調査報道」と呼ばれる手法は多様だが、「時間を惜しまない」という点は全てに共通している。関連文献に目を通すことや、何カ月・何年に及び対象者に密着する「地を這うような取材」によって、細かいディテールを浮き彫りにし、圧倒的で淡々とした「事実」を表現できる。速報的に流される「発表報道」では伝えきれない一面を内包することで、新しさを生みだせる。

この手法は時間を要するが故に、速報性と無縁だ。だからこそ、週刊誌や月刊誌の報道は、日刊紙に比べて時間的な制約が緩和されている分だけ、この手法を採用し易いと言えるだろう。正確に言うならば、そのような「深堀した」報道をしなければ、雑誌の存在意義すら問われることになりなりかねない。

その際に、原稿の完成度を高める指標が二つあると思われる。一点目は「新しい水脈を掘り起こす力」だ。例えば、ある人物にインタビュー取材をしたとする。多くの人は対外的な場面で用いるための言葉を用意している。そのような使い古され、使い慣れた言葉を聞き出すのは最低限の仕事に過ぎない。もっと重要であり、目指すべきは本人すら気付かなかった思いや考えを引き出すことだ。新しい水脈を掘り起こし、その人物の新たな一面を見出すことによって、生まれた「オリジナリティー」が読者を惹きつける大きな要素になりえる。対象人物が社会から一定の認知度があり、先行するインタビュー記事が多数ある場合ではなおさらだ。つまり、インタビュー取材の成否は取材以前の地道な下調べに大きく左右されることになる。

二点目は「無名を見つける力」だ。まだ知れていない人物に焦点を合わせ、そこから社会の一面を切り取ることで、新しいムーブメントや社会の問題点を浮き彫りにできるのだ。無名な人が直面した事実や問題点を拾い上げることで、圧倒的で淡々としたものが構築できる。一文、一文に事実という重みが加わり、訴求力を格段に高まると思われる。

今の私にもっとも足りないのは、この後者の力だと思われる。そのため、事実の「核」を掴み切れないままに、鳥瞰的な傾向が強くなり、一文が軽く、空虚なものになってしまっている。それをクリアー出来ない限り、限られた領域しか拓けないだろう。解決すべきは、そこに辿りつくまでのアプローチ方法を確立することだ。

ただ、そこに辿りつくためには経験が必要だが、ただ経験を重ねるだけでは辿りつかない。この難しさといかに向き合っていくのかも課題になりそうだ。